私が生まれる前の家族写真
私は三人兄妹の末っ子で、五つ上の兄と四つ上の姉がいる。
この兄妹も、すっかりおじさん・おばさんの部類に入ってしまった。
いつの間にか長くなった家族の歴史を物語るように、子供の頃からの膨大な数の写真が家の中に湧いて出るように在る。
いつだったかもう記憶にないけれど、おそらく二十歳は過ぎていたであろう頃、私はその湧いて出るように在る写真の中から偶然一枚を見つけた。
それは、今では見かけない絹目の印画紙。
写っているのは、建て直す前の古い我が家の居間で、縁側からの陽に照らされた”若い四人家族"。
少し色も褪せて、ひだまり感が増している。
二十代の若い父と母が、一歳くらいの兄と、やっとお座りが出来たくらいの姉を、それぞれ支えるように手を添えてカメラに向けている。
みんな可愛い。
もちろん私は、この頃まだ影も形もない。
なんか、もうそれだけで涙が出ちゃう。
今までに味わったことのない感情と感動。
こういうのを「エモい」って言うんだろうなぁ。
今は当たり前のようにこの家族の中で大きな顔してる私が、微塵も存在していない世界線っていうのもなんかグッとくる。
なんなら、まだ前世で生きてた頃かもしれない。
浪漫が止まらない。
ただただ、この可愛い家族の幸せを願ってしまう。